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禅宗で使用されている食器は、材質を鉄または土が本則とされ木製は禁じられているけれど、漆をかけたものは鉄製とみなすとして一般には黒塗りの漆器である、そうだ。つまり、鉄器に見せかけた代用品である。
漆器の歴史に於いて、繊細な挽き物の技術と落ち着いた滑らかな塗りによって金属器を模すという試みが繰り返し行われた。このことは木の器を基本として来た我々の感覚に、どのような影響をもたらしたのだろうか。
洋食器が、先行する金属器よって与えられた輪郭を追いながら発展し、陶器から磁器へと移り変る過程で、より鮮明に、より薄く、より均一なものを求められて来た。和食器に於いては上記の点と重なりながら、さらに独特の要素が思い当たる。手取り感と軽さである。
日本では、器を手に取り直接口をつける食事作法を持つけれど、箸を使う朝鮮や中国でも、これは無作法である。こうした習慣の背景には、熱が伝わりにくいという性質を持つ木の器を、我々が長い間使用して来たこともあるだろう。
日本の陶磁器には、土の性質からだけではない、これらの影響を見ることが出来るのだ。この地で好まれる、無理に力がかかっていない曲線を描いた輪郭線。明確な線を持ちながら柔らかさを持った面。手取りの軽さ。
漆器に於ける、繊細な挽き物の技術と落ち着いた滑らかな塗りによって金属器を模す、という試みを磁器製品開発に持ち込めないだろうか。輪郭を形成する無理のない線。明瞭に、けれども鋭くなりすぎない面のつながりや使い勝手に沿って配置された部分を追いつつ、古典が持つ機能性と意匠を探る。
“KAORU” タイムアンドスタイル ティーサービス
製造:光春窯 デザイン:猿山修 ブランド:タイムアンドスタイル 制作:東屋
ceramic works: koushun-gama, design: osamu saruyama, brand: time & style, production: azmaya